―第三章―
【男達のファイトクラブ】
その時、扉が開いた!
静寂の真夜中。暗闇のボクシングジムの入り口に一人の男が立っていた。かすかな街灯や、遠くからのネオンサインに照らされて、うっすらと男の姿が見える。
健二は直感でその男を「狼!」だと思った。
赤いタンクトップの下には体操選手の様な胸板が窮屈そうにあり、浅黒い健康的な肌の両腕には引き締まった無駄の無い筋肉。
髪の毛は全て逆立ち。そして獲物を睨みかえすかの様な鋭い目付き。
身長は健二より少し高いくらいだが筋肉の締まり方がまったく違う。もしファイトしたら隙を見せたらやられる、と思わせる印象だ。
「ひさしぶりやな、内藤。ええ?」
狼が吠えた
「またやらさしてもらうわ」
カツカツ、ごっつい大きな黒いブーツを鳴らして大股に歩く。
「兄貴もあとから来るんや、先下りてるぜ」
と言うと男は汚れたカーテンを開けてドアを開いて地下へと下りていった。
「あいつの名前は坂本マサト、身長174cm体重73kg、元プロキックボクサー新人王チャンプ」
「え?」
「その後二十歳の若さで挑戦者を次々とマットに沈めていって練習相手も怪我人が続出。通称、飢えた狼マサト。同じジムでもスパー相手がいない程の暴れんぼうで道場やぶりばかりして、今ではリングから下りてプロの喧嘩屋として稼いでいる」
「喧嘩屋?」
「裏社会の仕事だ。シマ争いや闇ファイトで雇われて、金で戦うファイターだ。今のところヤツは無敗だ」
「これがうちの闇ファイトの名簿だ、書いておけ」
オレは名簿の一番下に記入した。和佐田健二、16歳。身長170cm体重66kgサッカー部。
随分情けない自分のプロフィールだ。
一番上に内藤さんの名前があった。
内藤豊18歳。身長182cm、体重85kg。内藤ボクシングジム会長の長男。闇ファイトのオーナー。高校生プロボクサー、ボディビル歴三年、空手二段。柔道初段。
さすがは先輩。に凄い数字だ。カッコ良すぎるプロフィールだな。
その中に。
竹原アキラ、29歳。身長191cm体重97kg。
ボディビル歴十五年、空手歴二十六年、八段、柔道七段、合気道五段、元WBC世界ヘビー級チャンピオン。
'95K-1グランプリチャンピオン、ボディービル都大会優勝、全米極真空手大会優勝。西日本闇ファイトクラブチャンプ、全日本自衛海軍特殊部隊格闘教官長…。
凄いプロフィールがあった。プロの格闘家で海軍の軍人。そんなヤツまでいるのか、この闇ファイトクラブでは。
内藤さんが、
「来い」
とだけ言って地下に下りた。
マサトがバンテージをつけて待っていた。
「よお、ボウズ、闇ファイトは初めてか?」
オレはうなずいた。
「ビビって逃げ出すぜ、きっと」
「マサト、健二は見込みがあるんだ、俺が育てて最強のファイターにしてみせる」
「ほぅ、試してみっか?」
ボグゥッ!!
「はうっっ!」
一発、マサトの拳が勢い良く健二の腹を叩き込んだ。健二のうめき声が地下室に響き渡る。腹に激痛が走る!健二はボディをおさえて、体を固めた。
「ハッハッハッ!ヤワなボディだな。んなんじゃ、一分ももたねえぞ」
「げぼぉ」
不意打ちを食らったとは言え、ヤツの言うとおりだ。なんてざまだ。俺は腹筋の痛みを必死で耐え、
「てめぇ、ざけんな!」
健二はキレてマサトに突進していった。拳を握り大きく振りかぶって右ストレートを打つ!
「オラアッ!」
「よせ!健二!お前の適う相手じゃ…、」
バキッ!
内藤が言い終える前にマサトの左カウンタージャブ!マサトの拳が健二の右頬にめり込む!
「あ…」
その衝撃にたまらず健二はダウン!
「バカが…頭悪りなあ、一撃目で力の差がわからねえのか」
ジャブ、しかもワンパンでダウン。健二は訳も分からず鼻血を出している。
(くっ…は、速い…そして重い)
「ガキが、おしおきだな」
マサトは俺の胸ぐらをつかみ無理矢理立たせた。
(くそっ、マジで体動かねえ)
「やめろ、マサト。健二もだ。殴りあいはリングでしろ」
そう言うと階段の上が騒がしくなってきた。男たちの声。10、20…いや、もっとか?
ぞろぞろと人が集まってきた。ようやく闇ファイトクラブが始まるのだ。
中には様々なヤツがいた。
太ったヤツ、やせたサラリーマン、ガタイのいい泥だらけの兄ちゃん。入れ墨の金髪のヤンキー。特攻服を着たシンナー臭いヤツ、上半身裸で現れたマッチョのスキンヘッド。
皆、今にも暴れだしそうなほど血の気が盛んだ。
ファイトクラブはいつの間にか始まっていた。まず興奮した一人の男がリングに上がり周りを挑発し、対戦者が決まる。
ファイトは何でもありで。ルールは無い。負ければリングを下りて、勝てば連続してファイトするヤツもいる。
気が付くと100人以上の男たちが地下室を埋めつくしていた。熱い。熱気でめまいがしそうだ。
そしてあのマサトとか言う男もリングに上がった。たしかに強い。赤のグローブの付けている姿はまさに獣。屈強で剛腕な野郎共を簡単にノシていった。倒すごとに歓声が上がる。
さらに連勝を続けているマサト。次で五人目だ。
「おう内藤、久しぶりにやろうぜ」
「断る」
「じゃあボウズ、お前きやがれ!オレを殴りてえんだろ?サービスしてやっからよ」
マサトは俺を挑発してきたのだ。
「何だと、テメェ!ボコボコにしてやっよ!」
と言ったとき、
「仕方ねぇなあ」
内藤はシャツを脱ぎ筋肉をあらわにした、相変わらずの爆乳に、サイボーグみたいなバキバキの腹筋だ。
「おいおい、少し太ったんじゃねえか」
と、マサト。
「先輩、俺にやらしてくださいよ、マジ頭にきてんスよ」
「うるせえ!これは遊びじゃねえんだ。ガキはすっこんでろ!」
「…」
俺は胸倉をつかまれて、顔を近づけられ内藤さんが本気で怒った。内藤さんは振り返り、俺は何も言えずにただその広くデカイ筋肉の固まりの背中を見てるだけだった。
内藤は慣れた手つきで黒のグローブをつけ、
カーン。
ゴング…。
「始めは遊びで軽くやるか?」
「さっさとかかって来い」
俺の近くにいたガタイのいい男が、
「おい、マサトと内藤だぜ」
「ああ」
「知ってるのか?」
「知らねえのか?あの二人は昔から何度もファイトしてんだぜ」
「ホントか?で、どっちが強いんだ?」
「互角なのさ、30戦中、お互い15勝。まさに因縁の対決、宿命のライバルだな」
「こいつは見ものだぜ」
(先輩と互角…)
「まあマサトはキックボクシング引退してどっかの組に入ったらしいし、最近力を付けてきた内藤が有利かな」
だが、奴はプロの喧嘩屋として戦っているという…いや、心配することはない、あの内藤先輩だ。あの、化け物並みの強さは俺が身をもって知ってる。
「しかし、マサトには一撃必殺の技があるからなぁ…」
と、会話は続いていたが、健二はリングに目をやった。いや、目を離すことができなかった。
凄い勢いで内藤がラッシュをかけていたのだ。
シュッ!シュッ!
「あぶねえ」
内藤のジャブ。
「オラオラッ!どーした、マサト!」
肉弾戦でボディ!あの、内藤さんの得意パンチだ!
ドフッドフッ!

ガードの上からも効いている、鈍い音を立ててマサトの腹にヒット。一発もろに入った!
ズバンッ!
「うごふ!」
たまらずマサトは腹を抱えて膝を付いてダウン。ダン!マットが音を立てる。
やった!やっぱ先輩のボディーブローは最強だぜ。まだ高校生だというのに、元プロをここまで簡単にダウンさせるとは…。一瞬、内藤先輩が怖いと思った。
「どーした?昔の様にはいかないか」
「うぅうぅ…。はぁはぁ…バーカ、まだ始まったばっかだぜ…」
「そうかよ」
内藤は冷酷な声でそう言うとマサトの右腕をつかんで立たせ、軽い仕事でも片付けるかのように右の拳を固めマサトのボディにパンチを連打する。ど真ん中の腹筋だ!
ズンッズムッ!ボスッ!ボグッ!
「くっ、ふうぅっ!」
思わず漏れるマサトのうめき声。パンチの鈍い音と興奮しきった観客の声にまぎれて、ハッキリと聞こえてくる。
「俺のボディアッパーはどうだ?おお、もう息あがってんのか?オメエ、腹はあんまり鍛えねえのか?俺の拳が軽くめり込むぜ。まあ、鍛え方が違うがな」
「うるせえ」
とマサトは空いてる左手で攻撃!だが拳は空振り、内藤はすかさずカウンターのボディ!モロに入った!マサトは体を浮かせて完全に体重を内藤の拳に預けている。足は地面を求めて宙ぶらりんだ。
ズシィィィン!
その時だった。試合を見ていた健二は地下室の階段の方から何か凄い気配が感じた。振り返るとそこには、
(…鬼?…いや熊かゴリラか?…いや、もっと…、巨人…?)
少なくとも人間じゃない。体つきがまるで別の生きものだ。首の太さ、腕の太さ、何をとっても、これまで見てきた筋肉質の男とも異なっていた。人間だとしても自分と同じ素材で出来ていないだろう。肉や骨ではなく、鋼鉄か金で作られているはずだ。軍服の迷彩服にまとったいても、その体つきは人目で巨大とイメージさせる筋肉の塊だ。服の上からでも筋肉の線がくっきりわからくらいの、まさに、バケモノ!ベレー帽とスポーツサングラスで顔はよく分からないが、体中いかつくゴツゴツで傷だらけだ。あの、異常なまでの腕の太さ、何なんだいったい…。俺の腕の三本分くらいある。筋肉を極限まで付けたガタイ。まさに人間のバトル用。バトル・マシーン。
その男が歩いてリングサイドに立ち、
(高い…180、いや190はある)
間近で見るとさらに凄い迫力だ。健二はその男から殺気を感じて目をそらした。
(まさか…そうだ!こいつ…名簿の…?)
隣のガタイのいい兄ちゃんがこっそり耳打ちした。
「こいつは竹原アキラ。通称アキラ軍曹・または地獄の格闘教官。まあ戦闘のプロだ。お前も名簿を見ただろう?あいつがそうさ。まさに経歴も化け物。奴の裏にはどデカイ組織があるって聞くし、命が惜しきゃかかわるな」
「……」
どさぁっ!
リングではマサトが殴られこっちへ吹っ飛んできた。そして、
「兄貴、来たんですか?」
「おい、マサト。こんなザコと何分遊んでる。早く片つけろ」
「ウッス」
そしてマサトはその男の手に触れた。
(今…何かを、渡した…?)
すぐにマサトは立ち上がりファイティングポーズをとり、
「これからだぜ」
と言ったと同時に…、
バキッ!
「うおっ、」
すかさず内藤の顔面に頭突き!
「あ、汚ねえ!」
一瞬よろける内藤、すかさずそこへマサトのパンチ!
バコッッ!!!
不意打ちを食らったとはいえ、凄く鈍い音を立てて、内藤は吹っ飛んだ。
「くあっ!」
その一撃で内藤はかなり動揺した。足がフラフラしてなかなか体勢を戻せない。
(この野郎、まだこんな力が…、今まで手を抜いてたとでも言うのか…?まるで鉄球にでも殴られたみてえだ)
俺は、
「汚ねえぞ!コラ!」
と言うと、それを聞いた酔っ払った男が、
「おいガキ、お前、闇ファイトのルール知らねえのか?…ルール其の一、ルール無し」
マサトは急に表情を変え、あの飢えた狼のような目を取り戻し、
「うっし、本気だすぜぇ!」
隅のコーナーにぶっ飛ばされた内藤、何とか次の攻撃にそなえて体を低くして防御体勢に入るが、
ドス!ボス!ズン!
「オラアッ!遊びは終わりだよっガキが!!」
連続のボディボディボディ!
ガードの上からさらに凄まじい攻撃の嵐!あっという間にボコボコの内藤。
「俺のボディが弱ぇだと!だったら根性比べといくかぁ!?コラァ!!」
(せ、先輩、何だ。急に…おかしいぞ)
さっきまでまったくダメージが無かった筈なのに。さっきの一撃で先輩の様子がおかしい。…ひょっとして!…鉛!
「げぼげぼげぼぉ」
苦しそうに内藤がダウン。腹をおさえて、必死で息を整えようとするが、たまらず胃液を吐く。
「うぇ!」
「おぅ、なさけねえなあ、オラ立て」
マサトは髪をつかんで、
「うっうーん」
嫌がる内藤に、
ズムッ!
「はぅ!」
ボディ!ボディ!
「くたばれ!」
「げええぇぼおおぉっ!!」
ボディの連発。人形のように、殴られつづける内藤。ここらのヤンキーや族をシメてるちったあ名の知れた超バリバリの喧嘩が強い不良高校生。しかし今はまるでただの人間サンドバッグだ!
「まだだよ、俺より腹食らってねえぞ」
「ふぶっ、げはぁっ、んんん・・・・ぁ・・・はぁ・・・・はぁはぁ・・・・」
「息ができねえか、だらしねえな。次はどこに欲しい?また腹か?」
内藤の顔色が変わる。これ以上ボディがきたら、マジで殺される!!と言った表情だ。声が出せない内藤はなんとか首をふって(ボディはやめろ)と伝えようとする。しかし相手の嫌がる個所を攻撃するのが闘いというもの、まさに闇ファイトの決まりだ。健二は思わず目をそらした。
ドムムッ!ズボンッ!ドスドスドス!ボムッ!!ズムッ!ドボオッ!!ズバンッッ!!
鈍い肉を打つ音だけが嫌なリズムで聞こえてくる。
「うあぁぁぁ……」
>だんだん弱まる内藤の声に、我慢できず健二はまたリング中央を見つめた。
「はあはあ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・ぁ・・・」
「オラオラ!とっとと眠っちまいな!」
マサトは両手で内藤の頭をつかみ、思いっ切り引き寄せての膝蹴り!!!!

ズムゥゥッッ!!!!!
地下室に鈍い音が響き渡る!
「はあぅっっ!」
「決まりだな」
と、客の声。
「え?」
「マサトのスペシャルニーブローをまともに食らった、もう勝負は見えたぜ」
「おい、何言ってんだ、まだこれからが・・・・・・あ・・・・」
「げえええ!ぼぉぉ!」
健二がリングを見ると、さっきまでとは違い。絶望的な力の差が見える。余裕で獲物をしとめる飢えた野獣と、ロープぎわに這いつくばって逃げるのが精一杯の敗者。目の焦点は合ってなく腹を押さえて冷汗ばかり流している弱虫は今、腹筋の痛みと嘔吐の波と戦っている。
(え?先輩?な、情けねぇ)
「俺の膝蹴りをまともに食らって、立ち上がったヤツはいねえ」
「ヤツはキック時代にデビューから連戦連勝KOしているが、ヤツの膝を腹に受けて立ったヤツは見たことが無い」
「え・・・?」
「げふっがふっ!うぇぇ!」
(うそ・・・だろ)
「カッコ悪いな、そろそろフィニッシュと行くか」
「???」
四つん這いで腹をおさえ必死で呼吸を整えようと肩を大きく上下させ、ぶ厚い胸を膨らませようとしてる内藤に元キックボクサー・マサトは内藤の自慢のリーゼントをワシヅカミにして思いっきり引っ張った。さすがの内藤も髪の毛の痛みに耐えきれず「うあっ!」と叫んでマサトの左手をつかんで剥がそうとする。
(これは……ワナだ!)
さらに内藤の悲鳴は続き、頭はどんどん上へ。
(ダメだ先輩、ガードを上げちゃ!)
もはや内藤に反撃の意志は無い。
例の、健二の隣に立っている男が言った。
「終わりだな…」
ドボォォォンンッッ!!!
ノーガードの腹にマサトの容赦無いボディブロウ!!グローブの三分の二は内藤の腹にめり込んだ!

「……は………かぁ…!」
もう吐く胃液も、呻く声も出ない。ただ、我慢!内藤に残されたのは耐える事だけ。マサトに突き飛ばされて内藤はマットに大の字に沈んだ。
「っし、決めるぜぇ!」
マサトはコーナーのポールに上り、客の方を向いて余裕のマッスルポーズを作ってる。
「俺が最強だ!こんなガキ、マットに沈めてやるぜっ!オラアッ!」
そして客は大興奮!マサトはリング中央で寝ている内藤を見下ろし、
「オラアッ!」
高く、高く、ジャンプした。空中で体を丸めて一回転すると勢い良くマサトは真下に落ちてきた!
ドオオォォゥゥンン!!!
鈍く短く嫌な音がした。マサトの膝は内藤のボコボコの腹に食い込んで見えない。大の字の内藤はすでに気絶して動かない。白目を向いてリング中央で空を見ている。これがあの内藤先輩なのか、俺を半殺しの目に合わせた悪で強くて恐いあの先輩なのか、今はボロ雑巾のようになっている。客は絶叫の嵐、大興奮の渦の真っ最中。
マサトは呼吸を整え真っ赤に燃えてバーストしている全身の筋肉を少しずつ冷静さを取り戻して来て、リングサイドで見ていた男に声を掛けた。
「よう、兄貴ぃ。待たせたな、勝ったぜ」
「馬鹿野郎!あんなザコ相手に何分かかってる!」
「わ、わりぃ・・・」
「行くぞ」
マサトはリングサイドに来た時、
「おい」
俺は無意識に声を掛けた、
「待てよ。先輩がザコだと…、テメエ等イカサマしてただろう!」
「何だ?ガキが」
「こいつ、内藤の子分ッスよ」
「ほお・・・」
「グローブに鉛握り込んでるのを見たぜ、おぅ、卑怯モンがぁ!」
「度胸あるな、オイ。この俺の胸倉つかむとは・・・小僧、勝負はついたんだ。今更、因縁付けるのは男らしくねえなあ」
「正々堂々やってりゃ内藤先輩は勝ってたんだ!お前等がきたね………げぼっ!」
「黙れ、クソガキ」
「兄貴、何もそこまで・・・こいつただのガキッスよ」
「内藤の仲間なら、生かしておくわけにいかねえ」
俺は一発で気絶した。突き上げるような凄まじい衝撃を腹に受けて。一瞬体が浮き、呻き声を出して意識が途絶えた。かすかに、
「内藤を連れていけ」
と言う声と、誰かに持ち上げられた感覚。
「兄貴、そのガキをどうするつもりで」
「さあな、根性はありそうだ。叩けば使えるかもしれねえ」
とだけ聞こえた。
観客はそんなやりとりを気にもしないで新しくリングに立ったファイター達の戦いを興奮して叫んでいる。まだ男達のファイトクラブは始まったばかりなのだ…。
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